『金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞』受賞発表

2017年3月30日 カテゴリ:新着情報
金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞

『金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞』は平成28年7月7日(木)より募集が始まり、平成28年10月31日(月)に応募を締め切りました。全部で36作品のご応募をいただき、うち沖縄県内からの応募21作品、県外からの応募15作品でした。
厳正な審査が行われ、金城哲夫氏の命日にあたる平成29年2月26日に3作品が受賞作として発表されました。
今回の脚本賞が、金城哲夫に続く新しい才能の発掘につながることを期待します。受賞作については出版や舞台化などを進めて普及を図ります。

『金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞』受賞作
名前住所年齢職業・学歴作品タイトル
大賞山中 基義兵庫県51歳自営業星空の秘密
佳作宮城 淳沖縄県那覇市63歳小学校非常勤講師妖火日(ようかびー)
佳作近本 洋一沖縄県中頭郡北中城村41歳作家鉄ぬ世(くろがねぬよ)

募集要項

締め切り 2016年10月31日(月)当日消印有効
賞金 大賞 50万円(1点)
佳作   10万円(2点)
募集内容 沖縄を題材にした作品を募集

 

  • 日本語又はウチナー口による『沖縄を題材』としたオリジナル作品。時代背景・フィクション・ノンフィクションは問いません。
  • ジャンルは台詞劇とし、一般が広く上演できるものとします。
主催 一般社団法人南風原町観光協会
共催 南風原町、南風原町教育委員会、南風原町商工会
後援 沖縄県、一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー、公益財団法人沖縄県文化振興会、株式会社沖縄タイムス社、株式会社琉球新報社、琉球放送株式会社、沖縄テレビ放送株式会社、日本放送協会沖縄放送局、琉球朝日放送株式会社、株式会社ラジオ沖縄、株式会社エフエム沖縄、沖縄ケーブルネットワーク株式会社(※順不同)
協力 株式会社円谷プロダクション
一般社団法人南風原町観光協会
円谷プロダクション
同時開催「円谷プロダクションクリエイティブアワード 金城哲夫賞」新しい映像作品の企画・脚本を募集します。

講評

審査員による講評
真喜屋 力(審査委員長)

「星空の秘密」が受賞した最大の要因は、登場人物の魅力と、舞台ならではの奇想天外な構成にあります。この人たちに会ってみたい、こんな展開を舞台で観たい。そんな魅力がきちんと描きこまれている。傑作というのはそういった要素の中に、きちんとテーマが仕込まれている時に生まれるものだと思います。
逆にいうと、惜しくも落選した作品の多くは、思いついた物語の仕掛けやトリック、あるいはテーマ的なセリフを発するのに一生懸命で、登場人物がただの道具のようにしか見えない作品が、意外と多かったと言えるでしょう。
登場人物を描き込めれば、観客は彼らに感情移入するので、ちょっとした喜怒哀楽でも、いっしょに心を揺さぶられることになります。また「星空の秘密」のように、途中から全く別のジャンルに変わってしまう急展開でも、登場人物のその場その場の反応が一貫していれば、驚きはしても違和感は感じないものなのです。と、そんな物語作りのセオリーを改めて確認できました。

とはいえ「星空の秘密」にも大きな欠点はあります。それは土地勘のないことがバレバレの無理のある設定です。しかし、物語の主要な要因ではなく、舞台化する上での改変を前提にすれば無視できる範囲ではありました。
同様に落選作品の中には、歴史的考証ができていない作品も多く、そういった作品はテーマは良くても、まちがった文化を後世に残すことになるため、選ぶ側としても用心せずにいられません。歴史を扱う場合は「鉄ぬ世」のような、どこか異世界の物語になっていることも、違和感なく見せるには重要な方法論かもしれません。
今年は36作品と、前年をはるかに上回る応募作が集まり、選びがいのある年でした。来年以降もチャレンジ精神のある素晴らしい作品が、より多く集まることを期待しております。

富田 めぐみ(審査委員)

幼い頃に熱狂したウルトラマンの作者である金城哲夫の名を冠した脚本賞の審査員を仰せつかり、嬉しいのと同時に身の引き締まる思いでした。金城哲夫作品は、豊かな大衆性で人気を博しましたが、根底には愛、友情、人間の愚かさ、自然との関係・・・など深いテーマが忍んでいます。子ども向けのエンターテイメントという枠におさまらない作品だったからこそ、多くの人々に愛され長く心に残っているのでしょう。金城哲夫の功績を讃え、彼に続くクリエイターを発掘し育てることが本賞の目的です。彼が挑み続けた「深く人間を描きながら、エンターテイメントとして楽しめる」そんな目線を核にして選考に臨みました。

応募作全体や入賞作については他の審査員も触れているかと思うので、私は特に印象に残った作品「妖火日(ようかびー)」について書くことにします。近未来のどこかの島という設定になっていますが、今の沖縄を表していることは明白です。少々風刺が効きすぎてるところもありますが、様々な困難を笑いに昇華し表現してきた沖縄らしさに溢れています。読んでいると、舞台の大先輩から聞いた話を思い出しました。

戦時中はウチナー口を使う事が制限され、戦意高揚へつながるような芝居を強要されていたそうです。しかし、そんな中でも人々が求めるものを舞台人は届け続けました。慣れない日本語台本を書き、厳しい検閲にもめげず、上演中に監視役が抜き打ちで来ると、「マヤー(猫)が来た!」と誰かが舞台に知らせて踊りに切り替え、いなくなると再び芝居を上演する。そんなことを繰り返していたのだそうです。苦しい生活の中で、人々は芝居を欲し、舞台人たちも命がけで舞台に立っていたのです。芝居は人々の暮らしになくてはならないもので、心の支えとなっていました。

のど越しのよいものが好まれる昨今、舞台や映像の世界でも難しい話題は避けられ、わかりやすいものが量産される傾向にあります。消費されていくだけのエンターテイメントが溢れる中、「妖火日」をはじめとして、ユーモアに包まれた骨太の作品を書く意思と術を持った劇作家がいることに大いに感銘を受けました。一見豊かに見える現代ですが、満たされない心を持つ人々は少なくないと思います。今に生きる人に寄り添い、励まし、鼓舞するような芝居を届けていく使命が私たちにはあります。そしてそれを実現できる才能が放つ光を、本賞を通して確かに感じることができました。

嘉数 道彦(審査委員)

観客や視聴者を圧倒するほどのパワー溢れる作品の中に、弱者の視点や様々な問題提起が盛り込まれた魅力的な金城哲夫作品。そんな作者にあやかって、出身地・南風原の地から、新たな戯曲を誕生させようという画期的な企画に携わることができ、私自身、多くの作品に出会うことが出来ました。ありがとうございました。
作者自身の内に秘めたテーマを、どのように観客席へ伝えるか、それは決して容易なことではありません。今回、あらためて、感じさせられました。読み物としてではなく、生身の人間が演じ上げ、観客席と共に感動を創り上げることは、戯曲の完成後、様々な力を得た上で、舞台へ上げられることになります。金城哲夫という作者は、テレビドラマ、沖縄芝居、演劇など各ジャンルの特性を熟知した上で、実に様々な脚本を手掛けており、それがいずれの場においても功を奏したといえると思います。今回は、舞台での上演という前提のもと、審査を進めましたが、舞台作品としてではなく、映画やテレビドラマとして具現化すれば、大変素敵な作品に仕上がるであろうと感じる作品も多くありました。
「星空の秘密」は、自然とストーリーに惹きこまれていく強さを持ち合わせた作品でした。それは単純なようですが、大胆・斬新ということ以上に、実際はかなり難しいことかもしれません。二人の中学生を軸に、沖縄の過去、歴史を扱いつつ、重くなりがちな内容もそう感じさせることなく、主要な登場人物、個性豊かな人物を、県外出身として複数おくことも、物語を膨らまし、幅広い観客層に受け入れやすい設定となっていると思います。南風原、沖縄から発信する一作品として、沖縄の風土、文化をさらに良い形で取り入れ、工夫を重ね、舞台化されることを望みます。
沖縄の様々な地域性、多様な文化の要素を踏まえた上で、随所にその面白さをユーモアたっぷりに散りばめつつ描いた「妖化火」。個性的な着眼点の面白さを残しつつ、舞台化にあたっては、演出的な視点を交えて構成を含め練り直しを図ることで、新たな沖縄芝居の可能性を見出す演劇になると感じました。
タイムスリップ、過去と現代の行き来という設定は、今回他の作品にも多く見られましたが、「鉄の世」では、石器時代という時代設定、軸となるキジムナーの存在、その描かれ方が秀逸だと感じました。テレビや映画等の視覚的な演出手法でなく、舞台演劇としての表現に焦点をあて、今一度ブラッシュアップすることでより作品の完成度が増すのではと思います。

戯曲を書きあげるという大変地道で、かつ孤独との戦いを重ね、金城哲夫は多くの人々に夢と希望を与えてきました。生みの苦しみは、やがて夢と希望を観客に与えることの出来る、この上ない素敵な喜びに変わります。入賞作品に限らず、今回応募くださった作品が、作者自身の思いや信念を決して曲げることのない範囲で、多様な角度からの見直し、練り直しを重ね、多くの観客の共感と感動を呼ぶ戯曲として、今後上演されていくことを希望致します。

新垣 敏(審査委員)

全国からの応募で創造性にとんだ脚本が30本以上もあり驚きです。読む度にくすぐられ掻き立てられる感性、ほとんどが演ずる役者の負担を抜きに自由に書かれたのだろうと想像します。
タイムスリップもの、オキナワと沖縄、ガマといくさ、チャンプルークラシックストーリー、内面に潜む真実と偽り描写、ミステリアスとユーモア、定番のキジムナーもついにスマホSNSを使うまでになったのかと。
時空と登場人物設定、起承転結などの概念にとらわれず繰り出されるセリフの宝石箱の中から隠し味を創造しながら、最後の作品を選ぶことの難しさ。正直、選考委員として今回も眠れない夜が続きました。
大賞の「星空の秘密」、関西弁のセリフ仕立てドタバタ展開にとまどいながらもセピア色した沖縄海洋博時代の風景を思い出しながら読ませてもらいました。南風原のうみんちゅ具志堅星人、九州で事業主(ぬし)をしている地元(沖縄)の有力者、壺ヒーロー「ウフアミー」など奇想天外キャラと仮想現実がチャンプルーになり、重くなり過ぎない沖縄戦のシコリを垣間見た印象です。脚本のスリム化は否めないが逆にキャラを前面に舞台化してみると楽しめる作品なのではないでしょうか。
「鉄ぬ世」は、大昔を行き来するタイムスリップもの。過去と近世、単なる塊としての鉄の対局にある時代の塊、ふたつの自分、揺るがないマブイ、鉄が人を支配するのか、人の心が悪の道具に変えるのか、「繋がる」ことに意味合いを持たせた作品だと思う。最終選考に残った作品のひとつとして舞台化を期待します。
「妖火日」老人介護施設を背景にウチナーの歴史や社会的政治的背景をも描写させ読み手に一石投じるテーマ性のある作品かと思います。スーヤヌパーパー、ウンタマギルー、アンダケーボージャーはなつかしいですね。
「心霊ツアーIN沖縄」観光目的だけではなくパワースポット目当てに沖縄を訪れる多くの方がいますが、悲しい歴史が染みこんだこの土地を知り、実際にウタキやグスク、ガマの空気や匂い、訴えを感じたあとで読み直すと、より作品の深いテーマがみえてくるのかと思います。
最後になりましたが、応募して下さったすべての皆様には、敬意と感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

親泊 賢次(審査委員)

大賞そして佳作を受賞された3作品はどれも魅力的な作品です。心から沢山の人に観劇して欲しいと思える旨を重点に置きながら選考させていただきました。それぞれに自評を述べたいと思います。

大賞受賞作品「星空の秘密」
魅力的な登場人物や設定の上手さ、的確なト書き。拝読中はまるで上演中の舞台を観劇しているようで役者の表情や声まで聞こえてくるようでした。とても良い脚本で構成力の確かさやセンスの良さを感じます。
14歳の少女がある少年との出会いをきっかけに成長していく姿を三世代に渡る家族関係を絡めながら優しく丁寧にユーモアを交えながら描いています。
過去から学び目先の事象だけに囚われず前向きに生きる為に大切なモノは何なのか。
作品に落とし込まれたテーマやプロット自体が、故・金城哲夫氏への愛情溢れるオマージュになっていることも感慨深く感じました。沢山の人々に観て欲しい作品です。

佳作受賞作品「妖火日」
笑いあり、涙あり、風刺ありと今回の公募作品の中で突出して沖縄らしさが満載で本当の沖縄の時間が流れていると感じさせてくれる良く出来た脚本です。ほとんどの会話が沖縄の島言葉である沖縄口で語られていることに作者の熱い思い、今の時代においてこの作品の存在意義を強く感じます。琉球から大和世、アメリカ世から日本復帰と幾つもの世を生き抜いてきた先人達の逞しさや優しさ、ユーモアに満ちた精神の尊さやそれを受け継いでいくことの大切さを思い出させてくれる作品です。説明的な台詞や描写が少し気になるので人間の持つ躍動感や生々しさを生かせるエピソードを盛り込めたら対比が効いて更に良くなると思います。

佳作受賞作品「鉄(くるがに)の世」
この島に産まれ生きていることの意義、国家と個人の関係性、現実を歪んだ世界へと変えてしまう戦争そして愛。長く世界中で描かれ続けている普遍的なテーマであるにもかかわらず沖縄が舞台である事でそのテーマは更に深みを増し鮮烈な印象と感動を与えてくれる作品になっています。プロットに仕込まれたシンプルで骨太なテーマ、その力に翻弄されながら生き抜く主人公達の姿は現実世界の理りのなかで翻弄されながら生きている私達そのものだからでしょう。
舞台脚本としては洗練さが足りない部分も感じますがそれさえも世界観を構築する手段としてあるのでは?と感じるほど戯曲作品としての魅力が充分にあり、たくさんの可能性に満ちた作品だと思います。

受賞の言葉

受賞のことば
大賞 「星空の秘密」

山中 基義

一月二十五日。この日はぼくの誕生日です。その日に金城哲夫のふるさと沖縄・南風原町脚本賞大賞受賞の電話連絡を頂きました。こんなに大きな誕生日プレゼントをいただいたのははじめてです。審査をして下さり、選びだしていただきました多くの皆様方に本当に感謝いたします。
ぼくの書いた「星空の秘密」という物語は沖縄出身の両親を持つ主人公の女の子が関西育ちで、なかなか沖縄に馴染めないのですが、異形の者を含む様々な沖縄の人々に触れ、時に沖縄の歴史を肌で感じてゆく物語です。正直勉強不足な所もありますので、もし上演される際は南風原町の皆さんのアイデアを盛り込み、素敵な作品に生まれ変わらせてほしいものです。

佳作 「妖火日(ようかびー)」

宮城 淳

子どものころ夢中になって見たウルトラマンの作者金城哲夫さんが、沖縄県の出身で、しかも自分と同じ玉川大学の大先輩であったことに何ともいえない思いがしています。このような機会を作っていただいたことにとても感謝しています。
「妖火日」は、三十年あまり前にぐそーにいってしまった私の祖父となきあきらとの合作です。祖父が残してくれた小さな脚本を劇中劇のように使わせてもらいました。
この劇を作るに当たって、うちなーぐちでやりたいという思いが強かったです。そして、辺野古に座り込んでいる人たちが元気になってくれればと、そう思いました。
佳作をいただいたことに勇気をもらって、次はもっと、良い作品をと考えています。

佳作 「鉄ぬ世」

近本 洋一

金城哲夫氏の名を記した賞で評価が頂けたことを大変光栄に思います。この南風原町には琉球王朝に繋がる伝統と、激烈な沖縄戦の記憶が刻まれており、近年ではグスク時代の鉄器などの考古学的発見もされています。歴史に富むこの土地出身の金城氏は、その仕事で、古代神話のような原型的物語と、宇宙人すら仲間として受け入れる寛容な世界観を提示しました。そこには、古代から現代まで、海を越えてもたらされる吉凶様々な出来事を受容して来た沖縄の魂の在り方が反映されているように思います。内地出身の私が書いたマブイについての物語を評価して頂いたことで、そのような沖縄の魂を確かに描けていると認められたと感じます。嬉しい限りです。

受賞作のあらすじ

『金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞』を受賞した3作品のあらすじを掲載します。執筆者自身が作品の内容を要約した文章を下記リンクからダウンロードしていただけます。

主催・共催・後援・協力団体からのメッセージ

第2、第3の金城哲夫の誕生を期待します

南風原町観光協会 会長 照屋盛夫

私たち南風原町観光協会は、脚本家「故・金城哲夫」氏を南風原町の偉人として称え、未来を担う子共達が先人の偉大なる功績を知ることで、沖縄や南風原町(郷土 ふるさと)に対する愛着や誇りを育み、新たな光を与えるものになると「金城哲夫」氏を中心にまちづくりに取り組んできました。
そこで、第2、第3の金城哲夫が誕生することを期待し、氏のふるさと南風原町から新たな人材や作品を発信してくため、『金城哲夫のふるさと沖縄・南風原町脚本賞』を全国公募で行います!また、選考された脚本は、将来舞台化等のさまざまな取り組みを行なっていくことで、次世代に繋げることができれば、いまだ超えることができていない「金城哲夫」をいつの日かこえる脚本家が現れることを楽しみにしております。

金城哲夫氏の脚本賞開催を誇らしく思います

南風原町 町長 城間俊安

この度は「金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞」の開催、誠におめでとうございます。
また、本町の魅力が存分に発信されるよう本脚本賞の企画・運営あたる町観光協会、円谷プロダクション様に対し、心より感謝申しあげます。
さて、本町の偉人であります金城哲夫氏の名を冠した脚本賞が開催されることは、本町としても大変喜ばしく、また誇らしく思います。
応募される皆様におかれましては、この機会に是非とも金城哲夫氏のことを深く知っていただき、その上で金城哲夫氏を超える才知溢れる作品が生まれてくることを期待しております。

新しい才能に出会えることを期待しております

株式会社円谷プロダクション 代表取締役社長 大岡新一

円谷プロ初代企画文芸室長・金城哲夫さんの類稀なる発想力で構想された「ウルトラQ」「ウルトラマン」の放送から、今年で50年を迎えました。金城さんの“発明”ともいうべき<構成と脚本>は、シリーズの礎であり要と考えております。氏の功績を称えた脚本賞を、故郷・沖縄県南風原町と弊社とで同時に創設します。南風原町主催「南風原町・脚本賞」は沖縄がテーマの舞台劇を課題にされ、沖縄の文化や魅力の継承のためにも意義深いものです。弊社主催「金城哲夫賞」は映像作品を課題とし、「ウルトラマン」を生んだ創造力を超えるような才能を発掘して日本映像文化の未来のため邁進いたします。新しい才能に出会えることを期待しております。

審査員からのメッセージ
多くのクリエイターに勇気を与え続ける金城の夢

映画監督 真喜屋力

金城哲夫が「ウルトラマン」を作り出したという事実を知った時、僕は沖縄の人間として誇りに感じました。でも、それ以上に金城哲夫が多くの栄光と決別し、生まれ故郷の南風原町から、新たな物語を紡ぎ出そうとして、もがき苦しんでいたと知った時に、心が震えました。彼のそんな夢は、今では多くのクリエイターに共有され、勇気を与え続けているのではないでしょうか。金城哲夫の意志を継ぐような新たな創作や人材が、この企画から世界に羽ばたいていくことを期待しつつ、今年も審査を楽しみたいと思います。

現代の喜怒哀楽を豊かに孕んだ作品を期待

舞台演出家 富田めぐみ

金城哲夫の存在を知ったのは大人になってからのこと。子どもの頃に熱狂したウルトラマンの脚本家のひとりが沖縄出身と聞いて驚き嬉しかった。彼の作品は、ドラマチックな展開でエンターテイメントに徹しながら、根底にとても大切なメッセージを感じる。友情、寛容、自然への畏怖・・・また、沖縄人の悲哀をさりげなく込めていたという見方もある。あなたの伝えたいことは何ですか?現代の喜怒哀楽を豊かに孕んだ作品を期待!

沖縄から生まれる脚本との出会いにワクワクしています

国立劇場おきなわ 芸術監督 嘉数道彦

沖縄芝居ファンだった私が、少年時代、半信半疑で、新作の沖縄芝居の舞台へ足を運び、鑑賞した演目は、「一人豊見城」(作・金城哲夫)。従来のスタイルとは異なった斬新な芝居の中、沖縄独自の人情や明るさ、たくましさが散りばめられた舞台に、新しい作品が沖縄芝居として呼吸していること、新作を新作と感じさせない名作に、大変感銘を受けました。
御縁があり、今回新たな脚本の数々と出会う機会に恵まれました。現在だからこそ誕生する作品、今日ここ沖縄から生まれる脚本との出会いに、私自身、とてもワクワクしています。

右脳カラータイマーを止めることなくペンをとって

黄金森劇団 新垣敏

白黒テレビが普及し始めたドル時代、怪獣と戦うウルトラマンに興奮し星空を眺めてはM78星雲がどこにあるのか想像した昭和世代の一人として哲夫氏の血潮に思いをはせながら、迷走の中に埋もれそうになっている沖縄を
元気にしてくれる多くのライターからの応募を待っています。いつも葛藤や屈辱さいなまれてきたオキナワ、再生爆発する生命力と、明るい夢と希望を秘めたクンチグワーアイランドのために、ペンをとって下さい、右脳カラータイマーを止めることなく。

「今を生きる」皆さんに紡げる物語あるはず

黄金森劇団 親泊賢次

半世紀も前に、故・金城哲夫氏は円谷プロで魅力的な作品を執筆し続け、ユニークな発想と企画力を持つ彼は脚本制作の中心的存在であり全体を束ねる手腕を発揮していました。
「大切な物を守るために。」SF的要素や特撮を用いた表現の向こう側に当時の現実世界をしっかりと見据えながら...。絶えず変遷する世界で「今を生きる」皆さんだけに紡げる物語があるはずです。御健闘をお祈りしています。

関係者からのメッセージ
金城哲夫さんと私

監督・脚本家 飯島敏宏(千束北男)

金城哲夫さんと私は、50年ほど前、テレビで出会い、ともに脚本修行をした仲間です。「ウルトラQ」「ウルトラマン」では、円谷プロの企画文芸室長として全ての脚本に関与、私の筆名千束北男の命名者であり、合作もした間柄です。空想科学作品のみか、「純愛シリーズ」「泣いてたまるか」など、シリアスドラマ、喜劇、さらに沖縄芝居にも作品を遺す作家でした。

「金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞」によせて

脚本家 上原正三

直木賞を取るために帰郷した金城哲夫が題材に選んだのは南米移民だ。母のツル子さんはペルーからの帰国子女であった。南風原町は移民が多いと語っていた。金城は異国に渡った移民たちの生き様を書こうとしていた。それはとりもなおさず母への思いであり、海を渡った南風原の人々への畏敬の念でもあったと思う。ウージ畑で空を見上げながら異国で暮らす人々の喜怒哀楽を想像したであろう。そんな思いの詰まった小説を読みたかった。

いまだに全国からファンの方が見学に来られます

松風苑 支配人 金城和夫

兄が亡くなってから40年もの長い年月が経ちましたが、いまだに、全国からファンの方が書斎の見学に来られます。50代の方が数多く訪ねて来られ、兄の作品から、ともて大きな影響を受けましたと話されて、合掌されたり、涙ぐんだりする方もおられ、案内する私がびっくりする事があります。今年2月に、劇団民藝で「光の国から僕らのために」金城哲夫伝の公演が10日間東京で上演され、素晴らしい演出で感激しました。
是非、沖縄で再演をとお願いしている所です。

金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞

女優・コーディネーター 桜井浩子

本年2016年は「ウルトラQ」「ウルトラマン」の放送から50年を経た節目の年であります。
この記念すべき年に、ウルトラマンシリーズの創世期の立役者の一人、
我らが金城哲夫さんの賞が、設立される!とのこと。
しかも、金城さんの故郷、南風原町にて!何と素敵な事でしょう!
金城さんのような才能を、若い皆さんが大切に育みながら、次世代に繋いでいって下さることを心よりお祈り申し上げます。

金城を継ぐ才能が発掘されることを切望する

金城哲夫研究会 代表 佐藤文彦

40年前、宇宙の彼方へ旅立つように昇天した脚本家の金城哲夫。沖縄出身ながら東京の円谷プロの企画文藝室長というポストにあった金城は、『ウルトラマン』をはじめ、多くのファンタジー作品をつくった。これらの作品が50年を経過しても色褪せず現代の子供達も熱狂させるのは、未来を見つめつつ作ってきた金城をはじめとした当時のスタッフやキャストたちの先見性があったからに違いない。
その後沖縄に戻った金城は、琉球時代を題材にした舞台やラジオドラマを数多く手掛け、今度は沖縄から本土や世界への発信を試みた。
「金城哲夫のふるさと 沖縄・南風原町脚本賞」では、金城を継ぐ才能が多く発掘されることを切望する。

沖縄の元気力

ジャーナリスト 森口豁

沖縄は今、大変元気が良い。
「オール沖縄」に象徴される新基地建設への抗いは、文字通り「島ぐるみ」だ。 諸悪の根源である軍事基地が無くならない限り、この「元気」は元気であり続けるだろう。
《うちなーんちゅ うしぇーてぃないびらんどー》
翁長雄志県知事が発したこの言葉は、ヤマトからの差別に立ち向かう沖縄人の魂の警鐘だ。
そして「元気」のもう一つは、文化に関して。沖縄島からは、いま多くのアーティストや表現者たちが自己表現の発信に忙しい。音楽、演劇、絵画に写真・映像から小説や詩歌の世界まで…。「沖縄人であることを」を隠して生きた、あの鬱屈した時代からの大反転である。時空をこえて羽ばたく「琉球」の、なんと眩しいことか。
金城哲夫脚本賞が、その琉球文化の土壌を耕し続ける者たちの精神の支えとなるであろうことを、僕は信じて疑わない。